成年後見・任意後見の実務では、家庭裁判所への報告書や申立書をどう書くか、というのは誰もが一度は悩むところではないでしょうか。書式のひな形はあっても、「どう書けば裁判所側にきちんと伝わるのか」までは、なかなか教わる機会がありません。
先日、長年家庭裁判所の現場に携わってこられた方による、「後見人・保佐人・補助人と裁判所の付き合い方」をテーマにした研修に参加しました。書籍にはまず書かれていない、現場ならではの視点が多く、非常に実践的な内容でしたので、私自身の実務にも引きつけながらポイントを整理してご紹介します。
「結論ファースト」で書く
もっとも強調されていたのが、報告書や申立書は結論から書くということでした。
家庭裁判所の担当者は、大量の書類を限られた時間の中で処理しています。長い経緯説明のあとに結論が置かれている文章は、読み手にとって非常に負担が大きく、「結局何がしたいのか」が最後まで分からないまま読み進めることになってしまいます。
実務的には、次の順序が望ましいとのことでした。
- 結論(何をしたいか・何が起きたか)
- 理由
- 必要であれば経緯の説明
- 裏付け資料は本文中に書き込まず、「添付資料1」「添付資料2」として別添にする
項目ごとに見出しを立て、それぞれの項目でもまず結論を書く、という構成にするだけで、担当者の負担も、報告書が本人の意思に沿っているかを確認してもらいやすくなる、という指摘は、日々の書類作成にすぐ活かせる視点だと感じました。
裁判所が見ているのは「本人の意思に沿っているか」「不適切な処理がないか」
報告書に何をどこまで書けばよいか迷うことは多いですが、研修では「裁判所がチェックしているポイントは、大きく2つに絞られる」という説明がありました。
本人の意思を無視した(あるいは軽視した)処理になっていないか
不透明・不適切な財産管理が行われていないか
逆に言えば、この2点さえきちんと説明できていれば、報告書の分量そのものは重要ではありません。「意思決定支援」という考え方が制度の前提になっている以上、後見人・保佐人・補助人としては、「本人の意思をどう確認し、どう反映したか」を意識的に記録しておくことが、結果として裁判所への説明のしやすさにもつながります。
費用や報酬についても、まず「相談してよい」
戸籍謄本の取得費用や、専門職への報酬など、後見業務には何かとお金がかかる場面が出てきます。「これは自己負担になるのか、それとも本人の財産から支出してよいのか」という点は、多くの後見人が悩むところだと思います。
研修では、「まず経費や報酬について、率直に裁判所に相談してよい」という趣旨の説明がありました。財産が全くない状態であれば、そもそも裁判所側も無理な手続きを求めることはなく、必要な費用については、事前に「これは本人の財産から支出したい」と伝え、指示を仰ぐという進め方が現実的とのことです。
自己判断で「これは請求しない方がいいだろう」と抱え込むのではなく、判断に迷う点はまず率直に照会する、という姿勢が、結果的に双方にとってスムーズなやり取りにつながるようです。
後見人に求められているのは「法律」だけでなく「コーディネート機能」
もう一つ印象的だったのが、後見人・保佐人・補助人には、財産管理や法的手続きだけでなく、福祉・医療・地域資源をつなぐコーディネーターとしての役割が期待されている、という指摘でした。
制度の狭間で困っている方にとって必要なのは、法律の知識だけではなく、税務・福祉・地域の様々なサービスを組み合わせて生活環境を整えていく視点です。研修では、そうした「つなぐ」役割を担える専門職が実は少なく、フットワークよく動ける士業(行政書士等)にこそ期待が寄せられている、という話もありました。
同時に、コーディネート業務は労力がかかる一方で報酬に結びつきにくいという課題も指摘されており、後見業務を継続可能な形にしていくためには、後見報酬だけに依存せず、周辺の相談業務も含めたビジネスとして組み立てていく視点が必要だという意見も印象に残りました。
まとめ
家庭裁判所への報告というと、つい身構えてしまいがちですが、根底にあるのは「本人の意思を尊重できているか」「財産が適正に管理されているか」を確認する、という至ってシンプルな視点です。結論から書く、項目を立てる、資料は分けて添付する――こうした基本を押さえるだけで、担当者にとっても、後見人自身にとっても、やり取りの負担はぐっと軽くなります。
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