B型の「週6日開所」で平均工賃は上がる? ―平均利用者数のしくみと判断のポイント

B型の「週6日開所」で平均工賃は上がる?

「土曜も開所して平均利用者数を下げれば、平均工賃月額が上がる」と考えて、週6日開所にしている就労継続支援B型の事業所は少なくありません。

結論から言うと、効く場合はありますが、条件がそろわなければ人件費とサービス管理責任者(サビ管)の負担が増えるだけになります。さらに、令和9年度の報酬改定に向けて、計算に使う開所日数に上限をかける案も出ています。このコラムでは、その条件と改定案の影響を数字で整理します。

開所日数を増やすと平均工賃月額が上がる理由

平均工賃月額は、工賃支払総額を「開所日1日あたりの平均利用者数」で割って求めます。開所日数が増えて平均利用者数が下がれば、工賃総額が同じでも平均工賃月額は上がります。

  • 平均利用者数 = 年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数(小数点第2位以下を切り上げ)
  • 平均工賃月額 = 年間工賃支払総額 ÷ 平均利用者数 ÷ 12(円未満を四捨五入)
前提週5日開所週6日開所(土曜は平日より少ない)
年間開所日数240日288日
年間延べ利用者数3,600人3,840人(土曜は1日5人)
平均利用者数15.0人13.4人
年間工賃総額360万円384万円
平均工賃月額20,000円23,881円
数字は説明用の仮定です。工賃は平日・土曜とも1人1日1,000円としています。

土曜の来所が平日より少ないほど平均利用者数は下がり、平均工賃月額は上がります。これが「薄める」効果の正体です。

よくある誤解:受入れ人数を増やしても単価は上がらない

契約者が増えても、1日あたりの報酬単価は上がりません。B型の基本報酬は「1日あたりの単位 × 実際の利用日数」で、単位は定員規模・平均工賃月額の区分・人員配置で決まり、契約者の人数では変わらないからです。収入が増えるのは、延べ利用日数が増えた分だけです。

状態契約者1人あたり月の利用日数延べ利用日数
いま10人20日200日
週6日化後20人10日200日

この場合、収入は変わらず、個別支援計画とモニタリングの件数だけが倍になります。

しかも、週5日通う利用者はもともと増やせません。日中活動系サービスの利用日数は、原則として「その月の日数 − 8日」が上限だからです。一定期間をならして上限内に収める特例(指定権者への届出が必要)もありますが、年間の利用日数が大きく増えるわけではありません。土曜を開けても、既存の週5日の利用者は曜日が分散するだけです。

延べ利用日数が実際に増えるのは、次の2つに限られます。

  • 週3〜4日など、上限まで使っていない利用者が土曜を追加する
  • 土曜に新しい利用者が来る

ケース試算:定員17名・毎日満員の事業所が土曜を開所したら

毎日定員いっぱいの事業所では、土曜も17名来れば平均利用者数は17名のままで、「薄まる」ことはありません。

項目週5日週6日(土曜のみの利用者17名)
1週間の延べ利用者数85人102人
平均利用者数17名17名
延べ利用日数(収入の基)基準約2割増
契約者数17名34名
サビ管の配置基準1人1人(平均60人以下のため)
職員の勤務時間の総量基準約2割増

このケースは「平均を薄める」のではなく、定員の枠を土曜にもう1本使って利用者の総数を増やす形です。収入は増え、土曜の工賃の分だけ平均工賃月額も上がる可能性があります。一方で、サビ管1人が担当する契約者は17名から34名に倍増し、個別支援計画・アセスメント・モニタリングも倍になります。

令和9年度改定で検討されている見直し(2026年9月時点の案)

2026年9月28日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームで、厚生労働省はB型の基本報酬を「スコア方式」に変える案を示しました。平均工賃月額だけで区分を決めるのではなく、支援時間(1日の平均サービス提供時間)や障害の程度、地域連携活動・個別支援・支援体制・事業の透明性なども含めて、多面的に評価する案です。

あわせて、平均工賃の計算に使う開所日数について、利用者の年間利用上限日数(269日)を上限とする案も示されました。269日は、利用日数の原則の上限「その月の日数 − 8日」を1年分にした日数(365日 − 96日)にあたります。利用者が通える日数を超えて開所日を増やしても、計算上は数えないという考え方です。

この案のとおりになった場合、冒頭の例は次のようになります。

項目週5日開所週6日開所(現行の計算)週6日開所(上限案)
実際の開所日数240日288日288日
計算に使う開所日数240日288日269日
平均利用者数15.0人13.4人14.3人
平均工賃月額20,000円23,881円22,378円
前提は冒頭の表と同じです(年間延べ利用者数3,840人、工賃総額384万円)。

週5日開所(240日)の事業所は上限の269日を下回るため影響を受けませんが、週6日開所で「薄める」効果は小さくなります。さらにスコア方式になれば、平均工賃月額は評価項目の1つにすぎなくなるため、平均工賃を上げるためだけに開所日を増やす意味はいっそう薄れます。

なお、いずれもまだ検討段階の案で、決定したものではありません。正式な内容は、令和9年度改定の告示・通知で確認してください。

メリットとデメリット

メリット

  • 平均工賃月額の区分が上がりうる(区分の境目にいる事業所ほど効く。ただし令和9年度改定の上限案が採用されると効果は小さくなる)
  • 人員配置の計算に使う平均利用者数も下がり、必要な職員数や人員配置体制の上位区分を満たしやすくなる
  • 直近3か月平均の定員超過にかかりにくくなる
  • 平日に通いにくい人の受け皿になる

デメリット・注意点

  • 開所日に数えられるのは、工賃の支払いが生じる生産活動の実施日だけです。レクリエーションや行事の日は数えません。形だけの開所日は実地指導で認められず、報酬区分の根拠が崩れます
  • 土曜にも職員配置が要ります。週40時間の枠や休日確保のため、シフトや変形労働時間制の見直しが必要です
  • サビ管の配置基準は平均利用者数で決まるため、契約者が増えても基準上は1人のまま。計画作成とモニタリングの件数だけが増えます
  • 延べ利用者数 ÷(定員 × 開所日数)で見る稼働率は下がり、金融機関や自治体からの見え方が悪くなることがあります
  • 営業日を変えるので、運営規程・重要事項説明書の変更と指定権者への変更届が必要です
  • 土曜に人が来なければ、職員を置く費用だけがかかります

まとめ:判断のポイント

週6日化で得をするのは、次の2つがそろう場合です。

  1. 平均工賃月額の区分が上がり、1日あたりの単位が上がる
  2. 上限まで使っていない利用者や新しい利用者で、延べ利用日数が実際に増える

どちらもなければ、人件費とサビ管の負担が増えるだけになります。まずは自事業所の前年度の数字で、土曜を開所した場合に区分が上がるかを試算し、土曜に来る利用者の見込みと、サビ管が抱えられる契約者数を確かめてから判断するのが安全です。

また、令和9年度の改定では開所日数に上限をかける案や、スコア方式への移行案が出ています。平均工賃の区分を上げることだけを目的にした週6日化は、改定の内容が固まるまで待ってから判断するのが無難です。土曜開所を考えるなら、平日に通えない人の受け皿になる、延べ利用日数が実際に増える、といった本来の理由があるかどうかを先に確かめましょう。

出典

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