第2話|利用者の名前は、AIに渡さない

介護ポータルFLATTOPの手前にある話

FLATTOPの文案づくりにはAIを使っています。

そう話すと、たいてい最初に聞かれます。

「利用者さんの情報、外に出ませんか?」

当然の質問です。

支援記録や計画書には、名前も、病名も、家族のことも書かれています。

今回は、FLATTOPがなぜ今の形になったのか、その顛末の話です。

最初は「事業所のパソコンの中だけ」で動かすつもりだった

最初に考えたのは、AIを事業所のパソコンの中で動かす方法でした。

外に出さなければ、心配はいりません。

ところが、遅い。

文案ひとつに1分以上かかりました。

事業所のパソコンは性能がまちまちです。「AIのために高いパソコンを買ってください」とも言えません。

GPUを積んだクラウドも試しました。生成自体は速いのですが、使うたびに起動まで2分以上待たされ、同時に1件しか動かせない構成もありました。

これでは日々の業務には使えません。

国内のAIを選んだ理由

最終的に選んだのは、国内の事業者が提供するAIサービスです。

決め手は、利用条件として次の点を確認できたことでした。

  • サーバーが国内にある
  • 送った内容とAIが返した内容は、原則として保存しない
  • 送った内容をAIの学習に使わず、第三者にも提供しない

使っているAIの中身は、OpenAIが公開したモデルです。

ただし、動いているのは国内の事業者のサーバーで、OpenAIのサービスへ直接データを送る構成ではありません。

ChatGPTの画面へ支援記録を貼り付けて使うのとは、仕組みが違います。

一方で、利用条件には「事業者の事前の承諾なく、サービスを第三者に利用させてはならない」という趣旨の決まりもありました。

FLATTOPは、事業所の職員にこのAIを使ってもらう仕組みです。これに当たる可能性があります。

そこで、事業者へ直接問い合わせました。

回答は、今回の利用形態は対象になるものの、問い合わせをもって承諾するという内容でした。障害対応のため一時的に保存した内容についても、対応終了後に破棄するという説明でした。

このやり取りは、委託先を選んだ記録として残しています。

「再委託」という言葉について

事業所はFLATTOPに、記録や計画書などを扱う業務の一部を任せます。これが委託です。

FLATTOPは、その処理の一部をAIの事業者に任せます。これが再委託です。

事業所との契約書には、再委託先とその役割を一覧にして載せるようにしています。

知らないうちに別の会社へ情報が渡る、という形にはしません。

それでも名前は渡さない

国内で、学習にも使わない。

それでもFLATTOPは、利用者の名前をAIに渡さない設計にしています。

AIへ送る前に、名前、電話番号、生年月日、住所などを記号へ置き換えます。

AIが読むのは「利用者A」「家族A」といった形です。

返ってきた文章は、FLATTOPの中で元の表示へ戻します。置き換えの対応関係は、AI側へ送信しません。

さらに、置き換えた後にもう一度確認します。個人を直接特定する情報が残っていれば、その時点で送信を止めます。

AIは「下書き係」

もうひとつ決めていることがあります。

AIが書いたものを、そのまま確定しないことです。

AIの文章はあくまで下書きです。

読んで、直して、確定するのは職員です。

便利さと引き換えに、安心を手放すつもりはありません。

第2話は、そんな「AIに何を渡すか」の話でした。

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